一般的に看護師の仕事は激務で離職率も高い仕事だと言われています。少し調べるだけでも「看護師は非常にきつい仕事」「夜勤があって大変」「看護師不足」などの話題には事欠きません。
いわゆる「3K」以上にきつい「5K」「9K」などと揶揄されることもある看護業界ですが、日本看護協会の調査によれば看護師の離職率は以下のように報告されています。
【年度別 常勤看護職員離職率】 ※括弧内は新卒看護職員
2007年度 12.6% (8.9%)
2008年度 11.9% (9.2%)
2009年度 11.2% (8.6%)
2010年度 11.0% (8.1%)
(出典:平成24年度版看護白書)
「思ったほど高くない」と思われたかもしれません。実際、日本看護協会のコメントとしても「病院看護職員の離職率は一般女性労働者の離職率の平均よりも低い」とされています。確かに、サービス業などもっと離職率の高い業界は他にもあり、世間で言われているように看護師が特に離職率の高い職業、というわけでもなさそうです。
特に、このうち新卒者の離職率については全体に比べてさらに離職率が低いように見えます。しかしこの新卒者の離職率とは「年度末時点までに離職した者の比率」、つまり働き始めてから1年以内に辞めた人の数を元にしています。もし退職期日をどうにか引き延ばして1年と1カ月で辞めたとすればこの数字には入ってきません。
業界としても離職率は抑えたい所でしょうし、現実的に人手不足の看護業界にせっかく入ってきた新人が辞めると言ったところで簡単に「はいそうですか」と言うとは思えません。さらに、病院が看護学生に対して奨学金を出していることもあります。この場合、卒業後に1年とか3年といった一定の期間その病院で働くと返済が免除されるといった制度があり、それを利用した看護師は返済のためにその期間は辞めないということも考えられます。
実際に看護師の求人を探してみると時々「離職率0%」などとうたった病院も見かけます。普通の会社でも一年間に誰一人退職しないというのはちょっと考えにくい状況ではないでしょうか。それに誰も離職しないならどうして求人を出しているのかといった疑問も浮かびます。離職率の数字がどうであれ、実際に現場の看護師さんたちの声を聞いてみると「人が次々に辞めていく」「いつも人が足りない状態だ」と看護師不足が深刻であることを伺わせています。しかも、看護師の採用は毎年数十人単位で行われていますし、求人の募集も常に出ている状態なので表向きの数字だけで現状を判断するわけにもいかないようです。